11月3日に開催される神奈川県高校駅伝(男子)のレース展望をお届けします。最大の焦点は、優勝校のみに与えられる全国高校駅伝(都大路)出場権の行方と、続く関東大会への出場枠(※上位X校)をかけた争いです。 本記事では、今季の主要大会の結果や持ちタイムなど、収集可能なデータを基に男子各校の戦力を徹底比較。注目選手のパフォーマンスにも触れながら、激戦区・神奈川を制する高校を予想します。データには最新でない情報や漏れが含まれる可能性もありますが、現時点での勢力図を分析します。
最終更新:2024年10月15日
神奈川県高校駅伝(男子)の全体像:群雄割拠の「戦国駅伝」
今年のレースを展望する上で、まずは近年の神奈川県高校駅伝(男子)の勢力図を振り返ってみたいと思います。
かつて神奈川県は、長らく「藤沢翔陵高校」の1強時代が続いていました。1977年(昭和52年)から2016年(平成28年)までの40年間で、実に34回もの全国大会出場を誇る絶対王者として君臨し、他校はその高い壁に挑むという構図が長く続いたのです。
この絶対的な流れが変わった背景には、長年チームを率いた名将・小菅監督の勇退と、県内各校の急速なレベルアップ(他校の台頭)があります。
その結果、近年の勢力図は劇的に変化しています。 2017年(平成29年)に法政大学第二高校がその牙城を崩すと、2018年は鎌倉学園、2019年は藤沢翔陵高校が王座を奪還、2020年は相洋高校、2021年は東海大学付属相模高校、そして2022年には川崎市立橘高校と、毎年のように優勝校が入れ替わる、まさに「戦国時代」へと突入しました。
2023年、2024年には相洋高校が連覇を果たし、一歩リードしている印象もありますが、絶対的な優位とは言えません。どの高校が勝ってもおかしくない混戦模様は今年も健在で、順位を予想するのは非常に難しい反面、レース展開は最後まで目の離せない面白いものとなっています。
さらに、全国(都大路)への「1枠」だけでなく、関東高校駅伝への出場枠(上位6校)を巡る争いも熾烈を極めています。優勝争いに絡むチームだけでなく、6位入賞ライン上の実力も拮抗しており、当日のレースの流れや各区間の駆け引き次第で、順位が大きく変動する状況です。
近年の県高校駅伝結果
2024年
1位 2:11:13 相洋高校
2位 2:12:12 川崎市立橘高校
3位 2:12:53 東海大相模高校
4位 2:13:34 三浦学苑高校
5位 2:15:48 法政二高校
6位 2:15:55 湘南工大附高校
7位 2:16:19 旭丘高校
8位 2:17:01 光明相模原高校
9位 2:18:24 荏田高校
10位 2:19:22 秦野高校
2023年
1位 2:11:13 相洋高校
2位 2:12:12 川崎市立橘高校
3位 2:12:53 三浦学苑高校
4位 2:13:34 東海大相模高校
5位 2:15:48 藤沢翔陵高校
6位 2:15:55 荏田高校
7位 2:16:19 慶應高校
8位 2:17:01 鎌倉学園高校
9位 2:18:24 法政二高校
10位 2:19:22 光明相模原高校
2022年
1位 2:11:39 川崎市立橘高校
2位 2:11:55 東海大相模高校
3位 2:13:40 相洋高校
4位 2:13:47 藤沢翔陵高校
5位 2:16:00 慶應高校
6位 2:16:14 三浦学苑高校
7位 2:16:25 法政二高校
8位 2:17:21 鎌倉学園高校
9位 2:20:25 光明相模原高校
10位 2:20:36 秦野高校
注目校の戦力
相洋高校
<注目選手>
1畑中 蓮 14分13秒60
2川口 貴城 14分34秒45
3上出 陸仁 14分44秒64
4後藤 大晴 14秒44秒79
5小池 大晴 14分47秒43
6髙木 耕造 14分54秒24
7帯刀 唯 15分01秒80
8相原 蓮 15分03秒08
9成田 光希 15分09秒45
10本間 空 15分10秒76
相洋高校は、2023年、2024年と県高校駅伝で連覇を達成しました。その勝利の型は圧巻です。両年とも、1区を任された秋山選手が区間賞の快走でレースの主導権を握ると、チームは一切様子をみることなく、そのリードを最後まで守り切りました。まさに「最初から最後まで力でねじ伏せる」という、力強い駅伝を見せつけました。
新シーズンは、この強力な流れを作った秋山選手が卒業しますが、昨年を経験したメンバー4人が残っています。さらに今年もチームには中心となる有力選手がおり、戦力は充実しています。 4人の経験豊富な選手と、チームを牽引する新たな選手たちが融合し、どのようなレース展開を見せるのか。伝統の攻めの走りで3連覇を掴み取れるか、その戦いぶりに注目が集まります。
川崎市立橘高校
<注目選手>
1小沼 虎白 14分10秒95
2小林 歩夢14分30秒99
3菅井 涼司 14分32秒79
4谷口 隼太 14分36秒12
5金光 璃久 14分36秒16
6清田 翔太 14分52秒06
7津坂 嘉人 14分54秒68
8中田 智紘 14分55秒45
9守屋 晴琉 15分00秒01
10齋藤 大輝 15分07秒31
川崎市立橘高校は、ここ数年で急激に力をつけ、常に優勝候補として名前が挙がる強豪校です。その強さは駅伝に留まりません。短距離、跳躍、投擲といった他種目でも全国レベルの選手を輩出しており、陸上競技部としての総合力の高さは県内屈指です。
この総合力を背景に持つ駅伝チームの最大の魅力は、レース展開やコンディションに左右されない「外さない」抜群の安定感にあります。どんな試合でも、選手それぞれが自分の任された区間で役割を確実に果たします。
特に注目が集まるのは、インターハイ5000mで12位の成績を収めた小沼虎白選手です。この小沼選手を軸に、総合力の高いチームがどうレースを組み立てるのか。その堅実な走りで、他校の脅威となることは間違いありません。
東海大相模高校
<注目選手>
1小島 大輝 14分26秒79
2山本 隼士 14分27秒10
3髙田 康介 14分36秒07
4富樫 宙大 14分38秒80
5伊東 一隼 14分44秒83
6伊藤 優喜 14分44秒83
7森本 幸善 14分45秒98
8藤井 幸太郎 14分49秒78
9小松 隼太 14分51秒90
10林 優太郎 14分52秒86
近年、東海大相模高校は陸上競技部全体で急成長を遂げ、駅伝のみならず短距離、跳躍、投擲の全てで神奈川のトップを争う存在となりました。
特に駅伝部は、東海大学の両角監督のご子息であり、自身も名門・佐久長聖高校の卒業生である両角駿監督が指導にあたっています。
チーム最大の武器は、他を圧倒する選手層の厚さです。5000m14分台の記録を持つ選手を10人以上擁する布陣は県内随一と言えます。この豊富な戦力は、誰が主要区間を走ってもおかしくない層の厚さを意味し、特にレースが動く後半区間での勝負強さに期待が持てます。総合力で神奈川の頂点を狙います。
三浦学苑高校
<注目選手>
1鈴木 啓斗 14分51秒91
2潟山 倖太 14分58秒82
3石田 優 15分16秒05
4川本 羽洲 15分21秒51
5紫芝 洋之助 15分25秒76
6北川 武獅 15分28秒57
7夏坂 水綺 15分29秒90
8梶 悠磨 15分31秒89
9榎本 大輝 15分41秒47
10簑島 颯佑 15分41秒60
三浦学苑は、長らく女子チームが関東高校駅伝の常連校として活躍してきました。その一方で、男子チームは「あと一歩」で関東大会出場を逃す、悔しい順位が続いていました。
しかし、その状況はここ数年で一変します。5000mで14分台の記録を持つ選手を複数擁するようになり、チームの総合力が着実に底上げされました。かつての「あと一歩」の壁を乗り越え、今では男子も関東高校駅伝の常連校として安定した成績を収めています。伝統ある女子に続き、男子も神奈川の駅伝界で確固たる地位を築きつつあります。
法政二高校
<注目選手>
1森田 正貴 14分52秒05
2小石 洋平 14分55秒43
3長谷川 峻介 14分56秒45
4三浦 晃 15分03秒26
5本多 遼太 15分27秒65
6江口 立翔 15分33秒22
7櫻井 誠大 15分38秒45
8江川 颯大 15分41秒00
9千葉 皓陽 15分41秒07
10長原 朋希 15分43秒74
法政第二高校は、2017年に神奈川県高校駅伝を制覇した実績を持ち、古くから関東高校駅伝の常連校として知られる伝統校です。
しかしながら、近年はチームの安定感や選手層の厚さに課題があり、年によって結果に波が見られます。関東大会出場をぎりぎりで逃す年と、出場権を獲得できる年を繰り返しているのが現状です。
チームが本来持っているポテンシャルは高く、レース当日の勢いと流れをいかに掴むかが鍵となります。うまく流れに乗り、チーム一丸となって力を発揮できれば、今年も関東大会への出場は十分に可能でしょう。
湘南工大附高校
<注目選手>
1村松 大海 14分39秒15
2外山 裕一 14分40秒30
3依田 雄太 14分57秒08
4石渡 瑛虎 15分24秒08
5橋本 武志 15分24秒37
6天神 滋温 15分51秒34
7野下 慶太 15分53秒21
8西村 優斗 16分35秒08
9永島 貴翔 16分50秒69
湘南工大附高校は、神奈川県高校駅伝では毎年10番前後を争う位置につけており、関東高校駅伝への出場権にはあと一歩届かないことが多いチームです。
しかし、昨年はチームが躍進し、見事に6位入賞。関東大会への切符を掴み取りました。
今年もチーム全体の選手層という点では課題が残りますが、村松選手、外山選手、依田選手といった主軸は力を持っています。彼ら中心選手が本番で持てる力を最大限に発揮することができれば、2年連続となる関東大会出場も十分に見えてくるでしょう。
旭丘高校
1永井 武裟士 14分50秒69
2永井 愛都 15分00秒69
3菅原 涼 15分17秒15
4川口 澄海 15分28秒24
5小塚 希生 15分34秒26
6伊藤 洸瑠 15分41秒74
7塚本 遥斗 15分44秒15
8八代 悠楽 15分57秒78
9石野 照屋 16分01秒86
10和田 恵祐 16分06秒95
今年の神奈川県高校駅伝において、ダークホースとして注目したいのが旭丘高校です。近年まで上位争いに名を連ねることは多くありませんでしたが、着実に力を蓄えてきました。
チームの最大の強みは、5000mで15分台の記録を持つ選手を多く擁する、その選手層の厚さです。特定の選手に頼るのではなく、チーム全体でレースを押し上げられる地力があります。
駅伝は後半区間での粘りが勝負を分けます。この厚い選手層がレース後半でうまく機能し、流れに乗ることができれば、上位争いに食い込む力は十分にあります。関東高校駅伝への出場権獲得も、現実的な目標として見えてくるでしょう。
光明相模原高校
1佐藤 蒼斗 14分37秒44
2岡村 皇樹 14分57秒45
3竹内 勇翔 15分15秒81
4平澤 弘大 15分22秒49
5鈴木 創羽 15分26秒19
6鈴木 敬瑛 15分27秒64
7貞包 昴弥 15分32秒93
8磯崎 蓮凌 15分35秒23
9宮﨑 太郎 15分36秒17
10石橋 涼太 15分37秒41
光明相模原高校の最大の武器は、他校を圧倒するほどの選手層の厚さです。5000mで15分台の記録を持つ選手を多く揃えており、チーム全体の底上げが図られています。
この豊富な戦力は、駅伝において大きなアドバンテージとなります。関東高校駅伝への出場権獲得に向けては、特に距離が長く設定される主要区間での走りが重要です。この長い距離の区間で粘り強さを発揮できるかどうかが、関東への切符を掴むための鍵となるでしょう。
荏田高校
1石井 将人 14分47秒71
2柏健 太郎 15分19秒84
3西舘 蓮 15分30秒00
4ダウニング 隆太 15分36秒46
5中村 颯馬 15分42秒42
6黒木 郁武 15分43秒06
7田淵 秀真 15分45秒91
8宮田 椋平 15分49秒40
9佐藤 陽翔 15分49秒40
10谷 慧斗 15分50秒95
荏田高校は、女子の森田姉妹を輩出したことで知られる陸上の伝統校です。
今年のチームは、選手層の薄さに加え、2番手、3番手の選手の走りに課題を抱えています。そのため、レースでは特に距離の長い主要区間が苦しい展開になると予想されます。
しかし、この重要な区間で大きく流れを切らさず、粘りの走りを見せることができれば、関東高校駅伝への出場権も十分に見えてくるでしょう。伝統校としての意地が試されるレースとなります。
順位の予想とデータ
上位3名の5000m平均タイム
過去の県駅伝を見ても4区での順位と総合順位はほとんど変わりません。1区(10km)、3区(8km)、4区(8km)は走る距離が長く、各校のエース、2番手、3番手が主に走ります。その参考になる各校の上位3名の5000mの平均タイムです。
1位 川崎市立橘高校 14分25秒
2位 東海大相模 14分30秒
3位 相洋高校 14分30秒
4位 湘南工大附高校 14分45秒
5位 法政二高校 14分54秒
6位 光明相模原高校 14分55秒
7位 三浦学苑高校 15分02秒
8位 旭丘高校 15分02秒
9位 荏田高校 15分12秒
上位9名の5000m平均タイム
駅伝は総合力が重要です。アクシデントや調子が上がってこないなど、自己ベストが速い選手が走るとは限りません。総合力の指標になる上位9名の5000mの平均タイムです。
1位 東海大相模 14分25秒
2位 川崎市立橘高校 14分30秒
3位 相洋高校 14分30秒
4位 法政二高校 14分45秒
5位 光明相模原高校 14分54秒
6位 三浦学苑高校 14分55秒
7位 旭丘高校 15分02秒
8位 荏田高校 15分02秒
9位 湘南工大附高校 15分12秒
駅伝の距離に換算した記録
実際の駅伝の区間の距離である1区10km、2区3km、3区8km、4区8km、5区3km、6区5km、7区5kmを長い距離から持ちタイムが良い選手が走る想定で計算してみます。
<計算方法>
「1番手の5000m」×2+「2番手の5000m」×8/5+「3番手の5000m」×8/5+「4番手の5000m」+「5番手の5000m」+「6番手の5000m」×3/5+「7番手の5000m」×3/5
順位の予想
私なりに順位を予想したいと思います。
優勝争い:相洋、川崎市立橘、東海大相模
4位 :法政二
5位争い:湘南工大附、三浦学苑、光明相模原
というところでしょうか。


